技術ブログの執筆には、文章を書く以外にも多くの付随作業が発生します。 環境構築、コードブロックの検証、スクリーンショットの撮影、OGP画像の作成、そしてデプロイ作業などです。
これらの「執筆以外のタスク」を効率化するために、A3roプロジェクトではGoogle DeepMindが開発した Antigravity を導入しました。 これは単なるチャットボットではなく、IDE、ブラウザ、ターミナルを統合的に操作できる自律型エージェント環境です。
今回は、A3roプロジェクトにおいてこれまでのLLMと何が違い、どう活用しているかについて解説します。
1. 文章を書くのではなく、構成を「指揮」する
従来のChatGPTやClaudeとの対話は、基本的にテキストボックスの中だけで完結していました。コードを生成してもらうことはできても、それをファイルに保存し、実行して動作を検証するのは人間の役割でした。
Antigravityの場合、エージェントはファイルシステムへのアクセス権を持っています。 「ブログのこの部分を修正して」と指示すると、エージェントは以下のように動きます。
- ファイルシステムを操作して該当ファイルを探し出す。
- 内容を読み取り、修正案を提示する。
- 実際にファイルを書き換える。
人間はエディタを開く必要すらなく、要件を伝え、結果をレビューし、承認するだけで済みます。執筆体験は「文字入力」から、全体像をコントロールする「指揮(Conducting)」へとシフトしました。
2. マルチモーダルなアセット生成
技術記事には視覚的な要素が不可欠ですが、記事の内容に合ったサムネイルや図解を用意するのは手間がかかる作業です。
Antigravityには generate_image ツールが内蔵されています。
「この記事の内容に合った、青を基調としたサムネイルを作って」と依頼するだけで、文脈を理解した画像を生成し、適切なディレクトリに保存してくれます。
特筆すべきは、「A3RO_THUMBNAIL_GUIDE.md」のようなスタイルガイドを読み込ませることで、デザインの一貫性を保ったまま画像を量産できる 点です。 この仕組みの導入に伴い、デザイン作業のボトルネックが解消されました。
3. 「目」を持つエージェントによるUI確認
Antigravityの大きな特徴として、ブラウザを操作し、画面を見る(スクリーンショットを解析する)能力 が挙げられます。
「デプロイ後のレイアウトが崩れていないか確認して」と指示すれば、エージェントは自律的に以下の手順を実行します。
- ローカルサーバー(localhost)を立ち上げる。
- Headlessブラウザでアクセスする。
- スクロールしながらスクリーンショットを撮影する。
- 画像解析を行い、「2番目の記事のサムネイルが表示されていません」といった具体的な報告を行う。
これはチャットベースのLLMには困難だったタスクであり、人間が目視確認していた「UIテスト」の一部を代替できる可能性があります。
4. 必要なツールを自作・拡張する
一般的なAIコンパニオンツールは、与えられた機能の範囲でしか動けません。しかしAntigravityは、環境自体をコードで拡張する ことができます。
今回の執筆中、「AIがMarkdownの記法を間違える」という問題が発生しました。 そこで私は、「品質を守るためのLinterを作って、可能なら自動修正して」と指示しました。
数分後、ディレクトリには lint.py が生成され、デプロイ用スクリプト manager.py には自動修正ロジックが組み込まれました。
「機能が足りなければ、その場で作らせる」。このエンジニアリング主体のスピード感こそが、Antigravityを採用した最大の理由です。
5. 自律的なデプロイサイクル
記事が完成し、画像が配置され、プレビュー確認が終われば、デプロイです。
「コミットしてデプロイしておいて」という指示一つで、エージェントはGitコマンドを実行し、ビルドスクリプトを走らせ、Cloudflare Pagesへのデプロイを行います。 もしエラーが出た場合は、ログを読み取って修正案を提示し、再試行することもあります。
A3roプロジェクトにおいて、私は多くの時間を「意思決定」に使い、実装や定型作業の多くをAntigravityに任せることができました。
結論
Antigravityを選ぶ理由は、それが単なる「効率化ツール」ではなく、タスクを自律的に分解・実行できる「エージェント」だからです。
この環境での開発体験は、未来のエンジニアリングのあり方を予感させるものです。 雑務から解放され、より本質的なクリエイティビティに集中したい開発者にとって、Antigravityは強力な選択肢となるでしょう。